04.02
Sun
2016-17s 2017. 04.02.Sun.13:00
本当は他のカテゴリや演技そのものについてもじっくり語りたいところですが、ちょっとその時間がとれないので、男子シングルのみ総括的に簡単な感想を。

羽生さんについては、もう何も言うことはありません。
最後のスピンが終わるまえから涙が止まりませんでした。(文字どおり号泣していた ^ ^;)
本当にすばらしい演技を魅せてくれて、ありがとうありがとう。

「Hope & Legacy」

まさに彼の演技と彼の存在そのものです。

ノーミスしかない、という状況でそれができるのが「羽生結弦」という人。



トップアスリートのメンタルコントロールというのは本当に壮絶なものだとあらためて感じています。
それは想像も及ばないほどのプレッシャーとの戦いだったことが試合後に流れてきた情報からも読み取れます。やはりショートの後、すごく落ち込んだんですね。

「数字にとらわれて、怖くて」 Vの羽生結弦、一問一答
世界選手権V奪還  羽生結弦が声を震わせた瞬間

試合後のミックスゾーン。キス&クライで採点結果を待つ間の心境を聞かれた羽生は、まずは間髪を入れずに「緊張しました」と切り出した。会心の滑りについて朗らかな口調で振り返ってきた流れのままの、張りのある声。ところが、その直後、にわかにトーンが変わった。
「本当に…、ファンの方も何人かおっしゃっていましたけど、自分が一番とらわれているものは、過去の自分で…。やはりあの『220』、『330』、『110』という、あの数字にすごくとらわれて、すごく怖くてここまでやってきていたので…」
その声は明らかに震えていた。胸中に秘めていた感情と瞬間的に向き合ったようだった。だがそれは一瞬。すぐに口調を元通りに整えて言った。
「何とか、1点でも、0・5でも、0・1でも超えてくれと思っていました」
その結果のフリー世界最高得点であり、5位から大逆転の金メダル奪回だった。およそ他の者にはわかり得ない重圧の中で、羽生はたくましいメンタルを育んでいたのだ。そして、「殻を少し、破った」と控えめに自らを褒めた。



過去の自分や数字にとらわれるなと言葉でいうのは簡単ですが、それは人間である以上、むしろ無理な話だろうと思います。そういう自分の感情を否定せず、とらわれている自分をどうコントロールするか。

そうして自分に集中しつつも、試合後のプレカンやインタビューの言葉は、周囲のサポートへの感謝、他の選手への敬意に溢れていますね。こういった発言が自然に出てくるのが彼の本質だろうと思います。「みんなちがってみんないい。」上っ面ではなく、他者との違いを認め、ごくごく自然に受け止めることのできる視野の広さが根本にあり、それが自分を高めることにもつながるという好循環を生んでいる。

【一問一答】羽生3季ぶり王座奪還「科学的に人間は5回転まで跳べるらしい」

-若手に追いかけられる立場になって。
「追いかけられる立場とよく言われるけど、SPで分かったように、まだまだ追いかける背中がたくさんある。パトリック(チャン)やハビエル(フェルナンデス)はフリーで順位を下げてしまったけど、SP1位はハビエルだったし、3位はパトリックだった。もちろん宇野選手、ボーヤン選手、ネイサン選手という若い選手にもたくさん強い選手がいて、それぞれが僕にないもの、長所を持っている。すべてが僕にとって、追いかける背中です」

-今後、ジャンプはどこまで進化する?
「なんか、科学的なことでいえば、人間は5回転まで跳べるらしいんですよ。ただ、まだ5回転の点数(基礎点)はないですし。でも自分は4回転アクセルは跳びたいと思ってます。試合に入れるか入れないかは分からないですが。ここまで4回転の多種類時代を作ったのは彼(3位の金博洋)。彼がルッツをクリーンに跳んで、みんなが“ルッツ跳んでいいんだ”“ルッツで人間跳べるんだ”ってなった。目指すべきところは僕の(世界記録の)330点だったりしたかもしれないけど、この4回転多種類時代を作ったのは、彼だと思います」



昌磨くんが素直に「ゆづくんを超えたい」と本人を目の前にして言える、その関係性や空気感も本当に良い時代だなと思います。彼は自分の演技直前に羽生くんの演技を観ていたんですね。「勝てないという自信」を持って自分に集中できたというメンタルの持ちようもまた独特で興味深いものがあります。今後「勝てるかも」という気持ちが芽生えたときにどう自分を保てるかが課題かな。
枠取りのプレッシャーについてはお互いの存在が心強かったでしょうね。

宇野、開き直り2位

最終グループ6人の中で5番目に登場した宇野は、それまで4人の演技を全て見ていた。最初の羽生が完璧に滑って「無理ですよ。あれだけの点数で、あれだけの演技を見て、どんな演技をしても勝てないなっていう自信が生まれたので、開き直って自分のことをやろう」と悟りきった。
(中略)
フリーで初めて200点超えを果たして、羽生、フェルナンデスに次ぎ世界歴代3位。合計は世界歴代2位。羽生とは2・28点差で、前半の3回転ルッツと中盤の4回転トーループの着氷が乱れなければ結果は違ったかもしれない。だが「ルッツがとかトーループとか言われても、あれ以上は無理です」と笑う。



ハビは、試合への影響は直接的にはなかったのかもしれませんが、一時、靴の到着が遅れたようで、不安な時間もあったでしょうし、3連覇への期待の重圧は少なからずあったでしょう。ネイサンは少し前に換えた靴が合わずに、結局、壊れかけの靴で比較的跳びやすい種類のジャンプに変えてフリーで6クワドに挑戦とか、もう開いた口が塞がらない。不可抗力とも言える事態にも対応できる準備と精神力、そして体力が必要になってきますね。

五輪までの1年弱の間にまた勢力図は多少変化するかもしれませんが、今大会の最終グループのメンバーが今後当面、男子シングルを牽引していくことになるのは確かでしょう。

ご本人たちも言っていたけれど、とにかく怪我だけはないように・・・。


選手のみなさま、お疲れさまでした。
すばらしい試合を本当にありがとうございました。





--- おまけ ---

20170402-1S.jpg
※スモメダセレモニー中継から羽生くんのサイン(公式ペリスコからのスクショです)


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comment comment 2
コメント
蒼森さん、総括ありがとうございます。
昨夜はアイスワインで祝杯を挙げました^^
昨日の羽生さんはとても澄んだ美しい顔をしていて、始まる前もとても集中しつつ落ち着いた感じだったので、今日は大丈夫!と私もいつもより緊張しないで見始めました。でも柔らかく美しいジャンプが次々と決まり、今シーズンのどの演技とも違う、まさにシーズン当初に私がイメージしていた、自然と一体になって、風のように、水の流れのように舞っていく姿に動悸が止まらなくなってしまいました。 こんな演技をあの状況で出来るなんて、と畏怖の念にかられると同時に、大自然に囲まれた時のような深い癒しと安らぎも感じる、というSEIMEIの時とはまた違う幸福感に満たされています。

フリーの記録更新と、世界王者の奪還も叶い、これで今までの悔しさと重荷から
解放されて、最高の形でオリンピックシーズンを迎えられること以上に、うれしいことはありません。蒼森さんも書かれていたとおり、まさしく「Hope &
Regacy」は、彼の存在と演技であると知らしめた、永遠に歴史に残る大会でしたね。 ショートの出遅れもそのために必要だったということですね(^_^;)

来シーズンは若手が更に伸びてきて、羽生くんは4ルッツと4アクセルも視野に入れている、というもうこれが現実か、という次元に戦いになっていくのでしょうが、ちょっとだけでも、身体と心を休めて欲しいものです。
国別はほどほどで、と思っても彼にほどほどなんてないのでしょうが・・・

幸せの余韻を楽しむエキシビも楽しみですね。

フィギュアスケートの恐さも、美しさも強さも、これまでになく思い知らされた、2017世界選手権でした。
すべてのカテゴリーの皆さんにこころからの尊敬と感謝をこめて、ありがとうございました。









くり | 2017.04.02 18:40 | 編集
くりさん

こちらこそコメントありがとうございます。
私もくりさんと同じような感じで、6練の羽生さんの表情を見ていたら、それまでの緊張が嘘のように解けていったのですが、演技が進むにつれ、今度は昨季からのさまざまな想いが去来して胸がいっぱいになってしまい、最後のルッツ着氷と同時に氷解してあふれだしました。

ご本人も、まるで自然に溶け込んでいくような感覚と表現したように、画面を通して観ているだけの私も、森の静寂、木々のざわめきの中を通り抜けていくような、まるで風と清流に身を任せているような感覚を覚えました。

「殻を少し破った」
少しという言葉が彼の背負うものの大きさを感じさせます。彼が現役選手でいる以上、「とらわれているもの」から完全に解放されることはこの先もないだろうとはわかっていても、いわゆるゾーンに入るという感覚は試合という真剣勝負の中でしか生まれないものだと思うし、少しでも長くそれをみていたいと思う一方で、試合後のインタビューなどを見ていても、解放された後の彼の人生もまたあらゆる可能性を秘めていて、とても楽しみだし応援したいという気持ちが湧きます。どちらも本音。

来年の今ごろはどうしているだろうとふと考えて、普段は胸の奥にしまってあるそんな複雑な想いがちょっぴり顔をのぞかせてしまい、ほんの少し切ない気分になっていた今日一日でした。
蒼森 | 2017.04.03 21:26 | 編集
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